足関節担当の三浦(@RyoheiMiura)です。
今回は中学〜高校生のスポーツ選手でよく遭遇するシンスプリントについてお話します。
シンスプリントは痛みが非常に強い場合があり、中には疲労骨折に至る例も少なくありません。
今回はシンスプリント基礎編ということで、どういった人が発症するかを中心にまとめていきます。
シンスプリントとは?

シンスプリントの正式名称は脛骨内側過労性症候群です(脛骨過労性骨膜炎とも表現されます)。
運動によって誘発される怪我の代表例であり、“脛の骨の後内側縁2/3〜1/3に起こる骨膜炎”と定義されています(文献1)。

図1 シンスプリントによる痛みが生じる領域(左脛を前から見た図)
ランナーを対象とした研究が多く、シンスプリントは13.6〜20%に生じることが示されています(文献2)。軍人を対象とした研究では、発生率は35%であったことが示されています(文献3)。
また、シンスプリントの一般的な症状として、“押した時の痛みと腫れ”だと言われています(文献4)。
実際は、どの競技にも起こることが多い印象です。中には無理して競技を継続している選手も少なくないのではないでしょうか。
シンスプリントの診断方法

なるべく早く状態を判断するには、MRIがベストです。
MRIでの重症度判定が実際の症状の重症度と一致することも明らかとなっています(文献5)。

図2 シンスプリント患者のMRI(文献7より引用)
脛の骨を正面から見た図になります。矢印の白い箇所は、骨の表面の膜(骨膜)と骨の内
部(骨髄)に腫れ(浮腫)が生じていることを示しています。
図2 シンスプリント患者のMRI(左)とレントゲン(右)(文献5より引用)
レントゲンでも骨の肥厚がわずかに確認できる場合があります。
また、シンスプリントは疲労骨折と区別する必要があります!シンスプリントと同じ領域に発生しやすい疾走型疲労骨折と、脛の骨の中央前方に生じやすい跳躍型疲労骨折があります(文献6)。詳細は割愛しますが、骨を押した時の痛みが強い場合は早めに受診しましょう。
シンスプリントになりやすい人はどんな人?

今のところ、いくつかの論文の結果をまとめた調査では以下のようにまとめられています。
表1 シンスプリントになりやすい人の要素(文献7・8を元に筆者作図)
BMI:Body mass indexの略(体重[kg]/身長[m]2)
Standing foot angle:内くるぶしと舟状骨と第1中足骨頭のなす角度
Q angle:膝の骨の位置関係を示す指標
脛骨内反:いわゆるO脚
回内足:足の内側のアーチがつぶれた状態
股関節外旋:座った状態で足を内側に捻った時の角度(股・膝関節は90度)
少しずつ明らかになってきている印象ですが、ぷれふぁでも取り上げた扁平足もシンスプリントに関与する可能性がありそうです。

また、体重増加という因子はシンスプリントの原因を探る上でキーポイントになりそうですね。
身体の硬さやランニングフォームなど、機能に関連する因子はまだ明らかになっていない可能性がありそうです。
おわりに
今回はシンスプリントの基礎についてまとめました。
ちなみに、シンスプリントは早期に発見できれば悪化しにくいと個人的な印象として感じています。
まずはシンスプリントになりやすい人の特徴を知ることで、予防につなげたいところです。
次回はシンスプリントの治療についてです。
執筆者:Ryohei Miura(@RyoheiMiura)
引用文献
- Mubarak SJ, Gould RN, Lee YF, Schmidt DA, Hargens AR. The medial tibial stress syndrome. A cause of shin splints.Am J Sports Med. 1982 Jul-Aug;10(4):201-5.
- Lopes AD, Hespanhol Júnior LC, Yeung SS, Costa LO. What are the main running-related musculoskeletal injuries? A Systematic Review. Sports Med. 2012 Oct 1;42(10):891-905. doi: 10.2165/11631170-000000000-00000.
- Yates B, White S.Am The incidence and risk factors in the development of medial tibial stress syndrome among naval recruits. J Sports Med. 2004 Apr-May;32(3):772-80.
- Agata Maria Gmachowska, Magdalena Żabicka, Ryszard Pacho,Szymon Pacho,Aleksandra Majek, and Beata Feldman. Tibial stress injuries – location, severity, and classification in magnetic resonance imaging examination. Pol J Radiol. 2018; 83: e471–e481.
- Beck BR, Bergman AG, Miner M, Arendt EA, Klevansky AB, Matheson GO, Norling TL, Marcus R. Tibial stress injury: relationship of radiographic, nuclear medicine bone scanning, MR imaging, and CT Severity grades to clinical severity and time to healing. Radiology. 2012 Jun;263(3):811-8. doi: 10.1148/radiol.12102426.
- Rettig AC, Shelbourne KD, McCarroll JR, Bisesi M, Watts J. The natural history and treatment of delayed union stress fractures of the anterior cortex of the tibia.Am J Sports Med. 1988 May-Jun;16(3):250-5.
- Reinking MF, Austin TM, Richter RR, Krieger MM. Medial Tibial Stress Syndrome in Active Individuals: A Systematic Review and Meta-analysis of Risk Factors. Sports Health. 2017 May/Jun;9(3):252-261. doi: 10.1177/1941738116673299. Epub 2016 Oct 1.
- Newman P, Witchalls J, Waddington G, Adams R. Risk factors associated with medial tibial stress syndrome in runners: a systematic review and meta-analysis. Open Access J Sports Med. 2013 Nov 13;4:229-41. doi: 10.2147/OAJSM.S39331.