下半身のケガ

足関節外側側副靱帯損傷(捻挫)の診断について

以前、足関節捻挫の予後因子(ある地点の状態でその後の状態を予測できるか)を紹介しました。

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今回は、捻挫がどうやって診断されているのかについてお話します。

一般的な捻挫の診断とその難しさ


基本的に、ここでの捻挫(足関節外側側副靱帯損傷)はつま先を内側に捻り受傷した捻挫を指します。

日本整形外科スポーツ学会の指標では、前距腓靭帯(図1)の部分損傷を1度、前距腓靭帯の完全損傷を2度、前距腓靭帯と踵腓靭帯の完全損傷を3度に分類しています(http://jossm.or.jp/series/flie/002.pdf)。

この靭帯損傷を評価する方法は様々あります。
しかし、捻挫は多く発生する怪我にも関わらず、正確に診断することは案外簡単ではありません

その理由として、
1)診断の時期によって精度が落ちる場合がある
2)検査によって靭帯損傷の診断精度が異な
3)見た目の腫れや痛みと損傷具合が合致しない場合がある

などが挙げられます。

図1 前距腓靭帯(外側側副靭帯の1つ) 足首を外側から見た図(筆者作図)
外くるぶしから距骨という骨に付き、捻挫で最も損傷しやすい靭帯です。

 

よく、”レントゲンを撮りましたが何もなくただの捻挫だと言われました”というお声も聞きます。しかし、レントゲンだけでは捻挫による損傷程度はわかりません。たかが捻挫、では前回お話したように長く痛みを抱えることになりかねません。

以上を踏まえ、前回のガイドラインで報告された足関節捻挫の診断をまとめていきます。

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これは本当に捻挫?骨折していない?


スポーツ現場では足関節の捻挫は多発し、遭遇された経験がある人は多いかと思います。痛みや腫れが強い場合・・・それは骨折の可能性が考えられます。

実際に、ある研究では捻挫の15%に骨折が含まれていたという報告もあります(文献1)。そんな中、捻挫によって骨折がないかを除外するためにOttawa ankle rules (オタワアンクルルール:OAR)という指標が用いられています(図2)。

図2 オタワアンクルルール(http://www.ohri.caより引用・作図)

 

このOARは、受傷後1週間以内の評価として正確かつ有効な指標であると報告されています(文献2−6)。この指標のポイントは、骨折を”除外”するための指標であることです。

骨折自体を評価するのではなく、”この指標に該当しなければ、骨折は考えにくい”と判断できます。この指標に当てはまったものの骨折がないこともあり得ます。しかし、少なくとも骨折の危険性を評価し骨折を見逃さないためにすべきことと考えれば、決して無駄な検査にはなりません。

スポーツ現場でも使用できる指標であり、ガイドラインではOARは推奨レベルが高いと述べられています。捻挫の評価として、見た目での腫れや痛みだけでなく、OARは一般の方も知っておいて欲しい情報だと思います。

捻挫の診断には何を使えば良いのか?

捻挫の代表的な診断方法は以下の通りです。

・徒手検査
・MRI
・超音波検査
・ストレスレントゲン
・関節造影

しかし、100%の診断方法はなかなかありません・・・検査を適切に組み合わせて診断する必要性があります。そこで、考慮すべき点として”感度”と”特異度”があります。

 

捻挫だ!・・・◯   捻挫ではない・・・×
とした場合、感度は正しく◯と判断できる確率、特異度は正しく×と判断できる確率を指します。もちろん、感度も特異度も高い検査が理想的であります。

 

例えば、感度が高く特異度が低いと、捻挫を正確に診断できるが、捻挫でない場合を捻挫でないと診断するには不十分な検査だといえます。

感度が低く特異度高いと、捻挫と診断しても捻挫でない場合があるが、捻挫でないものは捻挫でないと正確に診断できる検査だと言えます。今回は、ガイドラインで使用されていた検査の感度と特異度をまとめました(表1)。

 

表1 捻挫の診断で使用される検査の感度および特異度(ガイドラインより作図)

 

前方引き出しテストは一般的な検査方法で、靭帯にストレスをかけ損傷程度を評価します(図3)。ある研究では、受傷直後は痛みのせいで精度が落ちるが、受傷後5日以降は良くなると報告されています(文献7)。

図3 前方引き出しテスト。靭帯を伸ばすようなストレス(矢印)をかけ、
靭帯の痛みや緩みを評価します。

 

MRIは感度・特異度が共に高く、重度の靱帯損傷や骨軟骨の損傷も評価します。超音波は感度が高いものの、検査技術が必要であるために特異度が低い評価です(図4)。その他の検査にはストレスレントゲンと関節造影がありますが、受傷直後の検査としては推奨できないとガイドラインには記されていました。

図4 MRI検査(左)と超音波検査(右) 赤の点線内に見える線状の組織が靭帯です。
(筆者の足を超音波で見ていますが、捻挫をしたことがあるせいか
靭帯の輪郭が少しわかりにくくなっています)

 

受傷して捻挫の程度を検査・診断したい場合はまず医師による徒手検査や超音波検査、その後必要性があればMRIなどの追加精査が良いかと思います。

まとめ

今回は捻挫の診断方法についてガイドラインからまとめました。捻挫を受傷したら、まず骨折ではないかを確認し、その後は重症度に応じて適切な検査、必要に応じて組み合わせながら受ける必要性があると思います。

 

最近では超音波検査を導入されている病院やクリニックも増えています。超音波検査はMRIよりも精度は落ちますが、素早く状態を評価できる利点があります。一方で、捻挫に伴い骨軟骨を損傷する場合がありますが、超音波検査では評価は難しいです。MRI検査は他の検査よりも時間が要しますが、状態をある程度評価できます。

 

以上を踏まえると、スポーツ選手で試合を控えている場合や治療方針をより明確にしたい場合は、骨軟骨の損傷があると復帰は慎重に進める必要があるため、MRIまで撮影しておくことをお勧めします(もちろん、明らかにMRIまで撮影する必要性はない捻挫もあります。そのあたりの判断はお医者さんに診察してもらった上で考えて良いと思います)。

次回は、捻挫の治療についてです!

 

執筆者:Ryohei Miura(@RyoheiMiura

 

参考文献
タイトル:Diagnosis, treatment and prevention of ankle sprains: update of an evidence-based clinical guideline.

雑誌:Br J Sports Med. 2018 Aug;52(15):956. doi: 10.1136/bjsports-2017-098106. Epub 2018 Mar 7.
PMID:29514819

 

引用文献

  1. Bachmann LM, Kolb E, Koller MT, et al. Accuracy of Ottawa ankle rules to exclude fractures of the ankle and mid-foot: systematic review. BMJ 2003;326:417.
  2. Bachmann LM, Kolb E, Koller MT, et al. Accuracy of Ottawa ankle rules to exclude fractures of the ankle and mid-foot: systematic review. BMJ 2003;326:417.
  3. Knudsen R, Vijdea R, Damborg F. Validation of the Ottawa ankle rules in a Danish emergency department.Dan Med Bull 2010;57:A4142.
  4. Jonckheer P, Willems T, De Ridder R, et al. Evaluating fracture risk in acute ankle sprains: Any news since the Ottawa Ankle Rules? A systematic review. Eur J Gen Pract 2016;22:31–41.
  5. Meena S, Gangary SK. Validation of the Ottawa Ankle Rules in Indian Scenario. Arch Trauma Res2015;4:e20969.
  6. Wang X, Chang SM, Yu GR, et al. Clinical value of the Ottawa ankle rules for diagnosis of fractures in acute ankle injuries. PLoS One 2013;8:e63228.
  7. van Dijk CN, Lim LS, Bossuyt PM, et al. Physical examination is sufficient for the diagnosis of sprained ankles. J Bone Joint Surg Br 1996;78:958–62.