上半身のケガ

大谷翔平選手が肘を手術!二刀流で復帰できるの?

今シーズンから活躍の場をアメリカのメジャーリーグに移した大谷翔平選手。

ベーブ・ルース以来、100年ぶりに本格的な二刀流挑戦で全米のみならず世界を賑わせましたが、シーズン途中に肘の内側側副靭帯を損傷し10月1日にトミー・ジョン手術を受けました。

今月には日本人メジャーリーガーとして4人目となるア・リーグ新人王に輝いた大谷選手の来季以降の活躍も世界中の野球ファンが心待ちにしていることと思います。

トミー・ジョン手術とは?


トミー・ジョン手術とは、肘の内側側副靭帯(内側の靭帯)を再建する手術です。

もともとあった靭帯が切れたり緩んだりすると、正常な機能を果たしてくれなくなるので、その代わりとなる腱に差し替えるのです。

多くの場合、手首にある腱を採って移植します。
一般的には、再建術を行って投手として復帰するまでに1年前後かかります。

最近ではダルビッシュ有投手が1年以上かけてリハビリし、投手として復帰したことが記憶に新しい方もいらっしゃると思います。

では、その再建術をした選手全員が、投手として復帰できているのでしょうか。
投手として復帰できても元通りの100%の力で野球ができているのでしょうか。

今回は、これらについて調査した研究を紹介します。

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投手として復帰できているの?


この研究はメジャーリーグに所属する投手の中で、トミー・ジョン手術をした選手が投手として復帰できたのか、試合での成績がどう変わったか、再び肘を痛めることはあったのか、パフォーマンスはどう変化したのかを調査した研究です。

 

トミー・ジョン手術をした147名の投手のうち、メジャーリーグに投手として復帰できたのは、118名(80%)でした。

残りの20%の選手は、投手として復帰できなかった、もしくはマイナーリーグからメジャーリーグに昇格できなかったようです。

 

118名のうち19名は10試合未満の出場機会しかありませんでした。

残りの99名(67%)がメジャーリーグに昇格し、そこで戦力として複数試合に出場することができたということです。

手術をしてMLBに戻るまでの期間は平均して16.8ヶ月でした。

平均年齢は28.3歳です。

先発投手か中継ぎ投手かによる復帰率の差や、年齢による復帰率の差はなかったそうです。

パフォーマンスとは?


パフォーマンスがどれだけ戻っているかの前に、”パフォーマンス”とは何ぞやという話をしておきたいと思います。

この研究の中では、12項目のパフォーマンスを表す数値を取り扱っていました。
項目名と詳細は下記のとおりです。

防御率:規定イニングでいくつ自責点を取られたかを平均した数値

BAAP:打球が安打になった割合

K/BB:投手の制球力を示す指標

K/9:9イニングで三振をどれだけとれたか

WHIP:1投球回あたりの与四球+被安打

平均投球数:1イニング毎の平均投球数

P/PA:一打席あたりの投球数

投球した球がストライクゾーンに入った割合

1シーズンの投球イニング数

1シーズンの投球数

ストレートの割合

平均球速(ストレート)

投手の能力を表すこれらの項目は、投手成績として表され、その選手の年俸に影響を与えたり、他チームへ移籍する際のアピールポイントにもなります。

パフォーマンスは戻っているの?


パフォーマンスを表すものにいろいろな種類があることがわかったところで、そのパフォーマンスが果たして元に戻っているのか見ていきたいと思います。

下の表は、
手術する前の1年間の平均成績と、手術をして復帰したあと1年間の平均成績です。

項目 手術前 手術後
防御率 4.33 4.60
BAAP .248 .258
K/BB 2.33 2.27
K/9 7.51 7.27
WHIP 1.373 1.432
平均投球数 16.5 16.9
P/PA 3.85 3.88
投球した球が
ストライクゾーンに入った割合
51.40 48.50
1シーズンの投球
イニング数
85.5 72.7
1シーズンの投球数 1336 1202
ストレートの割合 62.80 60.40
ストレートの
平均球速(マイル)
91.0 90.8

見事に怪我前と相違ない成績を残していることがわかりました。
肘を怪我したあとは、どうしても球速が落ちてしまう不安があるようですが、その球速もほとんど差はありません。

トミー・ジョン手術は投手を救う1つの手段である


以上の結果から、手術をしたとしても成績が落ちることなく、見事復活できることが示されました。

ただし、これが全ての選手に当てはまることではありません。
肘を気にせず投げられるようになるには、手術半分・リハビリ半分です。

いくらよい手術をしても、その後のリハビリ期間に無理をしすぎる、あるいは怠ると、選手が望む高見へは登れません。

まずは肘の専門医にしっかりとした診察をしてもらい、手術適応となるのか、保存療法で治るのか、見極めをしてもらうことが必要ですね。

さらに進化した大谷翔平投手が戻ってくることを期待しています。

執筆者:Koki Hamada(@koukiii0617)

 

参考文献

Makhni EC et al,

Performance, Return to Competition, and Reinjury After Tommy John Surgery in Major League Baseball Pitchers: A Review of 147 Cases.

Am J Sports Med. 2014